書店で本を購入しようと思ったのですが、入荷待ちだったので、
時代小説は、山本周五郎の短編や高田郁さんの『銀二貫』『みをつくし料理帖』
『出世花』など読んだことがありますが、それほど多くないので、
失礼ながら西条奈加さんを知りませんでした。
単行本の題が『心淋し川』(うらさびしかわ)となっていますが、
『閨仏』『はじめましょ』『冬虫夏草』『明けぬ里』『灰の男』
6作の短編が連作になっています。
主な登場人物
- 茂十(久米茂左衛門) 心町(うらまち)長屋の差配
- ちほ 長屋に住む十九歳、針仕事で家計を支えている
- 元吉 『丸仁』の上絵師
- 大隅屋六兵衛 ヤッチャ場(青物市)の世話役
- りき 六兵衛の妾
- 郷介 仏師
- 与吾蔵 飯屋『四文屋』の板前
- るい 料理屋『今木』の仲居
- ゆか 境内で出会った七つの子ども
- 吉 薬種問屋『高鶴屋』のおかみ
- 富士之助 吉の息子
- 江季 富士之助の妻
- よう(葛葉) 酌婦。遊郭『三囲屋』の元遊女
- 桐八 瓦笥(かわらけ)職人、ようの亭主
- 明里 遊郭『三囲屋』の元花魁
- 会田錦介 茂十の旧友
- 修之助 茂十の息子
- 楡爺 長屋裏手の物置小屋に住む老爺
あらすじ
江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。
不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。
その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして...(「閨仏」)
飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。(「はじめましょ」)
感想(ネタバレなし)
しょっぱなの『心淋し川』を読んだときは、それほど引き込まれる感がなかったのですが、短編の連作なので、読み進めるうちに『心淋し川』に繋がっていくことがわかりました。
世間に見捨てられたような土地でも、そこにちゃんと人の暮らしがあり、哀しみやささやかな喜びもある。
おもてむきに見える人となりも、それまで生きてきた過去があり何かしら抱えて生きている。
現状の生活にもがきながらも、ささやかに暮らす人々に対する温もりが、心を満たす良作だと思います。
設定は江戸で、時代小説ですが今の時代にも通じる共通点があるように感じました。
時代小説のお供に
一冊手元にあるととても便利だと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。